蛍/ベンジャミン
っていたから
ゆらりふらりと
そして点滅を繰り返しながら
消えたり現れたりしている蛍を見て
僕は夏の湿った空気がどんなに目にしみても
まばたきをしたくなかった
窓枠にもたれながら
いつまでも一緒にそうしていたかった
でもそれも
記憶になってしまった
いくら思い出そうとしても
あのときと同じ光はもう見えない
似たものをさがすように
星を見上げる
戻ることのない時間のように
どうしてもぼやけてしまう
その小さな光さえも
たぶんもうじき
かすんでしまうのかもしれない}
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