蛍/ベンジャミン
 
{引用=それから僕らは目を閉じて
懐かしい記憶がまるで現実になるのを
ただ暗闇の中に見つめるしかなかった

夜は
真っ暗なだけじゃないと
遠い星々がささやいている
けれど確かにその暗さは
いろんな境目を消して
どこからどこまでが空かとか
わからなくしてしまうんだ

あの日
僕は最後の蛍を見た
もしも僕が子供だったら
夢中になって外に出て追いかけて
空を何度もつかもうと
手を振りかざしたに違いない
けれどそのときの僕には
それが蛍だとはっきりとわかったから
まるで信じられなかったんだ

蛍は
もうずっと昔に
いなくなってしまったと
あきらめてしまって
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