世界は勝手にできあがっている/within
きっていた
終わりが近付いてきて
急に冷え込んだから
カーディガンを重ね着した
もう終わるんだ
突然見えなくなった眼の代わりに
幻の声が誘う
毛布に潜って
ひと粒の子供に戻る
もうすぐコンペティションが始まる
空席のピアノが待っている
でももう行かない
このまま腐って土くれに戻るんだ
深い夜を渡りきると
光の柱が
光の天蓋が
この町を洗い流す
潜行してきた私も
にょっ
と
首を突き出して
海原を見渡す
「おはよう。味噌汁できとるで」
小さな小さな肺活量で
月を飲み込むように
大きく口を開けた
羽音が林の影から聞こえる
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