douze/ピッピ
 
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息苦しい帰り道を抜けて、ようやく家の鍵を開ける。ただいま。そこ
には何の生物の気配もない薄暗い空気が、早く外へ逃げたいと、一生
懸命藻掻いていた。私が歩くことで漸く落ち着きを取り戻した私の家
、だけど、私の心は、暗闇に馴染むほど、いつでも穏やかではない。


?.


「蚊が飛んでる」「蚊?冬なのに?」「いない?そう…網膜剥離の症
状に、そんなのを聞いたことがあるわ」「また。君はそうやって、す
ぐに目の病気に結びつける」「だって…」「涙の流しすぎは、病気な
んかじゃないよ」「それは」「笑って御覧ってば。そうすれば、きっ


??.

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