気になる季節/藪木二郎
ううううん
駐車場までは結構歩いた
ゴージャスな雰囲気の彼女の車は
意外なことに
普通の軽だった
その軽の左で
僕は小さくなろうとしていたんだけど
なにぶんデブだったもので
路上パーキングに停められていた車の
車内はひどくムッとしていた
なのに彼女はクーラーをかけなかった
窓も開けなかった
その状態でジャケットを脱ぐと
ノースリーブのワンピースだった
そして確かに
果実酒の匂いに混じって
何か濃密にビターな匂いが
タバコを点けると
彼女は車を発進させた
煙が嫌なら今すぐ止すけど
まあ
ニオイ消しね
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