『もう夏が来る、そんな気がした』/ま のすけ
 

  陽射しを浴びている
  人様の勝手な植樹によるものだとしても
  その緑が今の私には素直に美しい

   +  +  +  +

  鯛焼き屋の親爺が死んだ
  なぜだか知らないけれど
  自分と顔をあわす度
  「僕も旅に行きたいね、旅に」と。
  彼には自分が旅人とでも見えていたのだろうか

   +  +  +  +

  山間の、水が張られた田に
  その大きさの空
  その大きさを陽光(ひかり)
  更に、その大きさを
  ほんの一回り大きくした希望が存在している

   +  +  +  +

  影が
  濃さを帯びる
  眼を閉じるたび
  まぶたの裏には過去ばかりが甦る
  もう、そろそろ、そんな季節か

   +  +  +  +






 ※件の作品は、すべて五行で作られていますが、
  特に「五行歌」を意識してのことではあり
  ません。どちらかというと「五行詩」に近い
  ものであろうと思います。(作者)
戻る   Point(7)