五月二十四日/あ。
 
身体とこころが、一番遠い日


時計はひとつだけではない
空腹を知らせてくれるのも
まぶたに重みを加えるのも
呼吸を始めるのも終えるのも
全部がばらばらに針を向けていて
アラームはそれぞれ違う音で
各々の役割を淡々と果たしている


きっと、奥のほうにあるのだと思う
一年に一度、この日だけ
名前を変えることが出来る
変えなければならなくなる


塗り替えられた名前はまだ新しくて
なでてみれば温度を持っていそうで
どこかふわふわと浮き足立っていて
じきに馴染んでいくのだろうけれど
今はまだ、少し離れた出来事のようで


かぞえはじめた数字は減らない
時計は終わるときまで終わらない
忘れたように放り投げられた奥のほうで
いつの間にか当たり前になった頃
また、新たに刻むときがくる


そのときまで、今は
新しい数字を、よろしく

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