シナ子/嘉村奈緒
 
シナ子も、トマトを含んで哀しんでたよ


みずたまシナ子、まぶたの裏の南でわずかな集落が


湿る日に、縞シナ子の声で瑠璃をよんだ


あなたの蓄積されたシナ子は、憧れる曲線を描きます


部屋の隅の 烏合の菌糸に巻かれてシナ子病


シナ子なシナ子で、シナ子してしまうシナ子




穏やかな




3.


ねえ、シナ子
世界は美しいと人は言うのだけれど
僕はよくわからないし
シナ子とニッキを舐めている方がいい
平日の人気のない公園で
ぼんやりとしながら舐めるニッキは格別なんだ
季節ごとに咲く花も覚えた
楽しく辿り着ける道
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