モーニング・モーニング/吉田ぐんじょう
 

夜になったら幕を下げる
そういう仕事をするひとがいるに違いないと思う


今日は燃えるごみの日だ
ということを思い出したので
ごみの袋を手に提げ
サンダルを突っかけて
ぼんやりと階段を下りる

路上へ出ると
夜の役目を終えた幽霊たちが
透けた体でぞろぞろと
あちら側へ帰ってゆくところだった

ぼんやりしていると連れて行かれてしまうので
そそくさとごみを捨てて部屋へ戻る
ドアを閉める前に背後を確認すると
知らないうちに
小さい女の子の幽霊がついてきていたので
懇々と説得して帰ってもらった


着替えるために服を脱ぐ
胸のところに
包丁がつきたてられている
ああそういえば夕べは
刺し殺される夢を見たんだっけな
と思いながら包丁を抜き
台所で洗って拭いてから
食器棚の引き出しへおさめる

殺される夢を見ることが多いので
ここの引き出しには
包丁をはじめ
何種類もの凶器が放り込まれている

血が止まらないがいつものことだ
晩までには治るだろう


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