サキ/望月 ゆき
 
うかは知らない

わたしの知らない間に
高等専門学校も中退していた
ある日 
サキの部屋の前を通ると
ドアは開け放しで
中に大きなダンボールを前にしてすわる
サキがいた
「なに、それ」と聞くと
冬物と夏物を入れ替えたの、と答えた
その日の夕方
サキは家出した
住みこみバイト募集
のスナックの切り抜きが
部屋に落ちていた
それがわざとだったのかは聞いてない
サキはすぐ連れ戻された

それからまもなく
サキは年上の男と消えた
今度こそ手がかりは残さなかった
連絡もないまま
半年の月日がたったある日
母の口からサキの名前がはじめてもれた
「あのこがどこか
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