生意気さんカサカサさん/はらだよしひろ
 
 私がお母さんよ
        ・・・・・・

たしかに赤ちゃんのときは
   あんなにちっちゃかったんだね
だれでもあんなときが
       あったんだよね

生意気でも 生きてるし
ちっちゃいけど いきてるし

てのひらを自分の頬に当ててみる
「あ〜あ、カサカサな肌ねぇ」

カサカサでも 生きてるし

思わずにこっと笑みをうかべたら
揺りかごのなかの笑みも
いっぱい嬉しそうに
「よろしくね 生意気さん
 よろしくね カサカサさん」
と言ってるような
なにかしら小さな声でこたえてくれた

――ちん、ちりん――

風鈴の音色が
母と娘の静かな時に
こだまする

蝉の声も
揺りかごのなかの笑みには
子守唄で
心地よさそうに
寝息をたてていた

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