終わりのブリキ/しろう
心配はいらないから
関節という関節のギアの溝まで
海を浴びてみることにした
波も
波の波も
波にならない波も
波でさえない波でさえも
ここは
さよならの海
と呼ばれていたので
かつては
たくさんの人がここで別れたはずだろうし
別れなかった人もたくさんいたことだろう
夕暮れが暮れ始めて
立つものがみな傾いてゆく
稜線に引っ掛かってふるえている
太陽を追って坂を駆けた
影も
影の影も
影にならない影も
影でさえない影でさえも
ここは
はばたきの坂
と呼ばれていたので
かつては
たくさんの人がここで飛び立ったはずだろうし
飛び立
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