終わりのブリキ/しろう
いかなる根拠によるものか
今日が終わりの日だと分かった
朝日が昇る前
空が浅葱色に縁取られるのを
眺めているうちに知らされた
今日という日が
遠すぎる晴天になることだけは
あらかじめ知っていた
まだ涼しいうちに
ポケットに集め続けた種を
砂丘の砂だけの層を掬って
ぜんぶ植えることにした
種も
種の種も
種にならない種も
種でさえない種でさえも
ここは
ほほえみの丘
と呼ばれていたので
かつては
たくさんの人がここで笑ったはずだろうし
笑わなかった人もたくさんいたことだろう
太陽が南中する頃
もうブリキが錆びる心配
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