2度目の性/靜ト
度に心が綺麗になっていくような
どこかに還って行くようなそんな気持ちをぼんやり感じながら
どこからか君がやってきて
「耳をふさげ」
と言った
そんなのできない できるわけない
そんなの逃げだ卑怯だ薄情者だと叫ぶ
けれども君は耳を塞いだ
大きな両手で静かにわたしの耳をすっかり包み込んで
わたしは目をつむる
そうしたら
しんとした無の世界のどこかから
小さな足音が近づいて
とくとくとくとく
だんだん大きくなり
ああ そうか
ここにいたのか
ずっとここでわたしを待っていたのかと
わたしは赤い熱い廊下でわたしと見つめ合う
ゆっくりと差し延べられた手を
しっかり握りしめたら
いつの間にかわたし達は逆転して
目を開けて眩しさを確かめたら
本当に生きていくことを見つけた
戻る 編 削 Point(1)