paper flighter/mizunomadoka
上級生がかがみ込んでいた。にこりと笑って飛行機をこちらに投げる。
「やあ。飛行機チャンピオン」
上級生の投げた機体はその場で急激に半回転して、彼の足もとに墜落した。
「こんな風にね?」
何がこんな風になのか分からなかった。
少年がとまどっていると、彼は飛行機を拾い上げて少年に手渡した。
そしてランドセルからノートを取りだして破ると紙飛行機を折り始める。
広翼のアローヘッドだった。
昇降舵が見たことのない形をしている。
「真上に投げてロールしてからぶつかるように投げてみて?」
「ひっかかると思うよ」
「あの機体を救えるならいいさ。だろ?」
「わかった」
少年は練習もなく、風が途切れた瞬間に空に投げた。
飛行機はカミソリのように上昇し、きれいな回転で枝の機体に向かって下降してゆく。
「すごい!」
思わず声が出た。指から離れた瞬間には少年にも理解できた。
この機体の方が最高傑作よりも遙かに優れている。
それが彼だった。
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