white clover/mizunomadoka
笑ってた。
彼は自分を隠すのが下手で、格好つけるポイントも間違ってたから。
駅前のロータリーを右に入って
自転車置き場のフェンス沿いに階段を下りると
小さなレストランがある。
白いままごとセットみたいなポーチの看板に
『本日のメニュー♪』のイラストが貼られてるけど
料理の名前も値段も記されていない。
ドアを開けると、かすかな手応えに引かれて
天井に吊されたカウベルが鳴った。
「これどうしたの?」
「新しいのに替えてみたの」
アボンリーみたいな格好をした女の子が
ドアの前に集めた椅子に寝転がって天井を見ている。
「今日は遅かったのね?」
「ちょっと寄り道をしてたんだ」
「はい、これ」
彼は姉のおなかに紙袋を置く。
「なーに?」
「頼まれてたプレゼント」
「春の野原の白詰草だよ」
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