dog/mizunomadoka
 
なにもない荒野を旅していたとき。
バッファローの群れの中に一匹の犬をみつけた。

かつては開拓者とともにバッファローを追っていたのかもしれない。
昼は彼らの後方を歩き、夜には群れからすこし離れた場所で眠った。

犬は群れの中でも一番年老いて見えた。
日に何度も犬と群れとの距離は離れた。
その度にバッファローたちは歩みを止め、犬が追いつくのを待った。
そんなときの彼らはまるで彫像のようだった。
風に吹かれ、ただ遠くを見つめていた。

そんな様子を私たちはかわるがわる双眼鏡から覗いた。

私たちは犬と彼らに名前をつけた。
ドッグ、ジョー、キャロル、エリー、バルバトロス・・・

ある夜、野営をしていた私たちのところへ犬がやってきた。
犬は私たちの顔をしばらくじっと見つめてから、革紐を置いて去っていった。

次の朝、群れは姿を消していた。
犬の姿もなかった。

足跡の窪みだけが影になって落ちていた。


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