セントニコル地方/mizunomadoka
 

どこか遠い国に隕石が落ちて大変だったらしい、と
地面に広げた新聞紙を父さんが読んでくれている
僕はその声を聞きながら

イカれた導力エンジンの分解に取りかかる
それはもう何十年も前の新聞だよ、なんて意味のないことは言わない
南国の鳥がときおり枝を揺らす

せせらぎに足を浸しながら部品を洗う
暖かくて心地のいい午後にはうってつけのような故障だったな
そんな考え方がおかしくて自然と笑いがこみ上げてくる

その辺りの瓦礫を探せば
まだ使えるマジカルのひとつくらい見つかるかもしれない

ねえ父さん、今夜はここで寝るのもいいかもしれないね
心の中でそう呟いてクランクロッドを回す

記事が一巡りしたのか
それとも僕の声がきこえたのか
父さんはもういちど、
どこか遠い国に隕石が落ちて大変だったらしい、とくり返す


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