流些の刻 / ****'01/小野 一縷
紅い空の下に透視遠近法を無視して
一律の高さで連なってゆく 白樺の並木道を
黒く直進してゆく過去への焦点を暈し 浮き出した時点を凝視する
一つの近視眼的意識技法は 断続的であれ
記憶を脳裏に結晶し 定着させる
幽かに波打っている絹地の波頭に 繰り返し現れる 複雑な
点 線 面 音 味 熱 匂
柔らかな想い出に似た 胸やけが甘く染み渡る
何であれ 眼前にあるものが海だと 言葉なら言い切れる
波をうけ 沖へ流されて
脳が再現以外の表現を 意識に伝えられるのは いつになるだろう
不規則に移ろう進路と方位は 現在と未来を 同時に 複数の回転軸で
ぐらぐらと立体的に 回している
近付かず 引き寄せず
滾々と現れる事象が 言葉では表せない 色彩の証明を 時間を用いて 綴ってゆく
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