春告鳥と不如帰と鴉/板谷みきょう
 
ウの方が好きなのよ。」

息が荒くなるのを抑えながら
静かに口にしたが
首筋の血管は凄く速く脈打っていた

「ごめん。」

何をどう言えば
返事することもできず
そのまま疲れに任せて
いつもと変わりなく
泥のように眠った

目覚めた時にアイツは消え
二度と姿を現さなかった

あれからどうしているのか
いまだに解からないけれど
屋根に止まり嗚呼と哭く
明けの鴉の声を聞くと思い出す
戻る   Point(2)