希わくば…/蒲生万寿
 
希(ねが)わくば我を遠き過去へと放ち給へ 
国も無く、法も立つ前の世へと 
魂が剥き出しで居られ 
身体の傷が生きる証しであった 
あの日々へ 
ねぐらも無く、雨風に吹き晒されても 
輝く生命 
草いきれの中を、埃の中を 
外敵に恐れおののきながら 
我独り歩む 
自らを常に差し出しながらも 
あるべきものの美しさに陶酔する 
光を放て 
目を眩ませ 
これぞ生きることそのものなり 
生命だけを背負って生きる日々 
我が神なり 
己の神なり 
我が在するところ 
天地あり 
我の中で世界が一つに溶け落ちた 
あの時代へと 
魂は誘(いざな)われる 
永劫回帰の時代へと
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