バラナシ/蒲生万寿
 
荷を捨て 
独り旅立ち 
異国の河辺にたたずめば 
思い出すことに 
寂しき我が身に涙零すこともあるだろう 
河面に映る私は 
過去の者か? 
これからの者か? 
答え知らぬ間に 
涙の波紋によって思案は途切れていく 
やがて日も沈みゆく 
河向うの乾いた地へ 
私の姿を照らし 
背後につくる 
その影長くたなびき 
消え果てる頃 
辺りに夜が満ちて来 
私を誰からも見えなくするだろう 
ただ、ゆるゆると流れ行く河に 
虫の音が入り込む 
この音聴くは我独り 
この河辺 
この夜 
私自身
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