道は急速に右へとカーブし/オイタル
 
道は急速に右へとカーブし
街灯が
粉雪に色を試しているそのあたりで
ぼくは黒い髪の女の子に
恋をした

彼女は腕を垂らして
かばんを提げていた
髪をかきあげて
左目 右目と順々に
目じりのしわを増やしていった

朽ちていくビルの隣で
トビが声高く空を巡り
夜の川の青銅の淵に
星が一つすべり落ちる

曲がりくねって空まで続く道の入り口で
ぼくは彼女とすれ違い
連結の軋む帰りの電車の入り口で
ぼくは彼女を裏切り
雲を一つ二つ庇の陰から空へ流しながら
彼女はぼくから去っていった

寒い廊下で
ぼくは彼女に会釈し
長い銀行の受付で
彼女はぼくに会釈し
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