船/鈴木陽
 
指し示された文字がこの船のどこにあるのか、それは絶えず滑っていく、横滑りしていくのであり、その上で我々はその平面を読み解いていくのも自由であるようだし、また一瞬一瞬を切り取って、幽霊を歓待するのも自由だった。さしずめ、鳥の止まり木としての体だろう、船は我々が住むにしては非常に揺れていて、波にゆられるのはそれはこれが海に浮いているからに他ならず、根は流れに従ってなびいている、風にしたがって巡航する、我々の住む不動産は移り気が激しく、そして粗末であり、その代わり我々を確かに写植しながら、我々をあの暗い孔の中へと運んでいく。漂流させていく。

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