風の底/しべ
 
ほら
真っ黒な風が
掃き付け壁みたいな傷と
戯れてるぞ

雑木林の真上で渦巻くものは
ボイラーから沸き立つ煙だろ

煤塵の腹のしたで
桜色に染まる三日月も
呼吸器の音色も まっ白い
つまりは色なんてまるで無い

そう
このあたりではハクビシンが
よくはねとばされていて ぽこんと
惨い事になっている

錆びた郭公の嘴が ある
蚤の手足みたいで
譫言みたいで

薄化粧が泳ぐ霧中を
水田の向こう側まで
ブランコのように細い管を通して 泣く

湯船を見つめ
悲鳴だ
いやあれは郭公だ
オルゴールはあんな音じゃない

彼は腕をさすり
嵐に食べらんないように
ひたすら耐えていた

鉄橋が打楽器のような扱いだった
電車の音も聞こえて来ないし
やったらうるさい
夜だったんだよ

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