飴缶ガール/ゆえづ
少女の飴缶の中には
大小の安全ピンが無造作に入っている
色とりどりの錠剤に紛れ込み
それは笑っている
そして時々見え隠れして光る
虹を裂く蜻蛉のように
カラカラと音の鳴る鞄を引っ提げ
女を持て余す日々と
履きこなせないピンヒールが
おぼつかない足取りで街へと繰り出せば
眼鏡の似合う少年がついてくる
あかい飴をあげるよ
取り出すときには用心してね
ニ、三度転べば見違えるほどの男前
手足のひょろ長い少年は
その棒っきれのような腕をぐいと掴まれ
狼狽の色を隠せないでいる
すえた臭いの充満する路地裏で
薄汚れた排気ダクトに背をもたせ
少女は少年にキスをした
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