空気/真島正人
 
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世間が
大きな怪物に見える

それよりももっと恐ろしい怪獣が
他の場所にいる

麦畑が
静かに揺れている

彼らも
約束された平和の中に
揺れているだけ

刈りいれ時の時間、
刈り取られてしまう

運命が
僕たちを木っ端微塵にする

血と汗と涙の世界に
置き去りにする可能性も
捨てきれない

僕は泣くことも出来ない

泣くと叱られるから



木のボートに
乗っている

午後の空気を吸って

吐いた

海は凪いでいる
どこまでも空が晴れている

カンディンスキーの絵のように

奇妙でも複雑でもなく
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