アレクサンドラの撤退/加工技術について/真島正人
 
{引用=
球体の遠心力が
技巧的な楽器の音のようにかき消えていった
技巧ではいつも歯が立たないのだから
やめておけば、と僕は
それにいった
それは歯をむき出して僕に反抗して
怒りに狂って僕の両親から青春を奪おうとした
でもすべては過去に行われて過ぎ去ったことなので
その牙は食いちぎれなかった
その牙は今度は
レスター・ヤングのレコードをつまみ食いしようとした
それにも失敗した
牙はぐちゃぐちゃになったレコードを吐き出すどころか
レスター・ヤングの思い出に満ちた風情のレコードプレイヤーを形作り
吐き出した
どうして、
と僕が問い掛けると
牙は控えめに光った
季節
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