彼岸花/斗宿
 
逝く人々の言葉を語った

「独りじゃないだろう?」
涙の背中に染み込んだ母の声

「傍にいるから」
繰り返された約束

そんなものはまやかしだ

叫べば全てが
崩れ去ってしまいそうで
届かないと解かっている
幻のために言葉を封じた


花になりたい


ただ
それだけを思った


照る日の花になりたい
照らす陽の花になりたい

咲いて散る、一つの花に
荒れ野から空を仰ぐ
ただひとひらの花びらに
なって風にそよいでいたい


焦がれるままに伸ばした
指先に触れた紅色が
温もりなど持つはずもなく

花は
土と葉を赤に彩り
その冷ややかな熱だけを残した


愚かしいことだ
我も彼の地の人々も
自ら愛せぬと心閉ざした
人間そのものであるのに


そっと吐いたため息が
最後の花弁を散らした

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