憂い/木屋 亞万
く
葉もろともに落ちる枝のようである
私の身体が私を殺そうとしている
私の細胞の中に反旗を翻す者たちがいるのだ
やがて彼らの声は体中に転移し
私の身体のすべてを奪っていくのだろう
枕もとの蕾が
私の陽気さを日に日に奪っていく
その花が開いたとしても
実を結ぶことはないというのに
若くうつくしい女が隣のベッドで眠る
長い黒髪を後ろでひとつに結わえている
私は彼女の纏まった毛先で美しい言葉を紡ぐ夢を見る
彼女の声は山から吹き降ろす風のように低く
とても力強い
私は西行の歌の話をしようと思っていたのに
彼女は西田敏行の歌の話をするのだった
私の指はまだピアノを弾くことができない
春までは生きていたい
そこに苦痛で溢れたギロチンが
口を開けて待っていたとしても
私の人生が美しいもので満ちるように
今日もまた筆をとるのだ
戻る 編 削 Point(0)