憂い/木屋 亞万
 
私のからだの過半数が私に死を命じている
花が春に咲くために
陽気さを私から奪っているのだ

真に美しいものを腹の底から渇望する
出来合いのものはもう冷めていて
油は白く固まってしまっている
自分で作らなければならない
と、筆をとる

茎が生えてくる
そぼろのような大地から
兄弟のように二本
長い方が兄だ
未熟なほうは妹であろう
女の方が先に花を咲かせるのは
もはや世の常と言っていい
兄は葉を繁らせて兄弟を養うのみだ

私の筆は音を描けない
纏まった毛先は歌うことを知らず
年頃の女のように枝毛ばかりを気にしている

私の指先は映像を掴むに
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