沈黙を喰らう獣/15フィールズ
を受けてきたので
何も聞けませんでした
ある日も私が散歩をしていると
やはり沈黙を喰らう獣は朽ちかけたベンチの裏に
物音一つたてずに
じっと座っていました
その日の私は好奇心を抑えられなくなって
そのベンチに座ってみました
ミシッと危険な音はしましたが
まだ何とか座れました
獣は身動き一つした様子がありません
なのでもうしばらく様子を見ようと思ったそのとき
すっ、とその沈黙を喰らう獣は
私の口に入り込んで来たのです
抵抗する暇もありませんでした
子供達は無邪気に声を上げて遊び
ご婦人達はご歓談
誰もこちらを見ていません
でも確かにその獣は
私の体に傷一つ付けることなく
私の中に入り込んできたのです
それからでしょうか
私がこんなことを話すようになったのは
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