スコール/なまねこ
 
るとよつゆがかわいていた

彼はやっぱり大通りに立っていた
手袋も、靴下も、マフラーも持たずに熱帯雨林の夢を見ていた
氷ったみずうみのような色のランプを貼り付けて、冷え切っていた
彼をおどろかさないように、わたしは作業員のような顔をつくって、
彼のそばの歩道にバイクを止めた
赤いブレーキランプがともるのに気づいて、彼はちいさくみじろぎしたように見えた

マフラーに顔をうずめて、息を吹き込む
わたしはあたたかった
やけどしそうなくらいに、
彼よりもずっとあたたかかった
えりもとからマフラーを抜きとって、低く息を吸う彼に、にぎらせてやった
わたしは上着のえりを立てて、これみよがしに身をふるわせて、
それから、一度だけ笑った
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