モンスター/ゆえづ
見上げればごってりと重い雲
白い息が毛足の長い獣毛に見えた
冬は君に似て神経質で
こすれる風に落とした溜息を
ほんの少しゆるいからと
君は薄ら笑いを浮かべ
柊の乾いた葉で引っ掻いた
ぱしん
ひび割れた脛の音
雷鳴に目覚めたらベッドの上
白昼は静止する
放課後の音楽室で鳴いていた
あれはやはり風だった
クラリネットを床に叩きつけたのも
君じゃない
風だったんだよ
走れない
また会えるといい
どこか遠くで張り裂けた夏に
ようやく許せる僕が居る
ぱしん
さようなら
さようなら
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