覚りの出勤/散布すべき薬物の所持2
 
夜中に自転車走らせて 
吹雪く雪中、白い闇 
雪が覗かれた黒い路面は 
地獄へと繋がる穴なのです 
顔や、手や、耳や、鼻などは 
既に凍りついて動かぬ 
脚ばかりが無機質に動く 
白い闇、雪中の戯。 
コンクリートはいまや影となる 
右耳を削いだ木の枝 は刃物だ 
コンクリートに埋まる金属は 
タイヤ越しの冷を与える 
俺は職場に行かなくてはならない 
俺は職場に行かなくてはならない 
鼓膜も凍り付き、もう何も聞こえない 
ただ赤ん坊の笑う声がヒヒヒッと聞こえる 
職場に着けば菩薩がいる、 
それは確かに存在している 
菩薩の愛熱で氷を溶かし、 
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