Little rock'n'roll/たちばなまこと
に揺らす
体育館の女の子たちはため息混じりに
それぞれの胸の内を編み直す
隣で目をつむる友だちのミユは
ギターも弾くし、ソングライトもしていた
私は絵と詩とカラオケとお菓子作りが好きなだけだったけれど
「ミカがヴォーカルで、ジュリマリのコピーやりたいなぁ」ってミユが
言ってくれたのが、とびきり嬉しかった
最終日のビンゴゲームの日に
「あいつと別れてきた」って、シンヤくんが耳打ちをする
口元から、生ぬるくて甘い、男の子のにおいがした
みんな、今も、音楽を演っているのだろうか
ドラムもベースもギターもヴォーカルも、口説き文句にしてしまう
たぶん、それは不器用な手段で
女の子は容易く、その不器用さに、口説かれてしまうから
メロディーはずるいほどに美しいよ
そんな風に
私は誰かを思いながら、新しいキーボードで
コード進行のお勉強を始める
新しいうたを、うたおうとしている
戻る 編 削 Point(8)