二月のはじめに降り続く雪の/あぐり
の浜辺でぼくときみはただしくさよならをして
水面に積もる雪の方がずっと
ぼくにはきれいに見えていたよ、きれいに、きれいに
きみの横顔に触れたこともなくて
ぼくの嘘を信じていなかったきみには
今、傍にいないぼくを嘘吐きだなんて呼ぶ資格はないんだって、知ってる?
鈍色の空から降り続く雪は
あの海にもまた降り積もるんだろうか
きみは今日もひとりで深く深く眠っていて
多分、ひとかけらの夢もみていないんだろう
ぼくの鼓膜を悴ませている
二月のはじめに降り続く雪の
淡く凍り付いた白さはやっぱり
きみの前髪からのぞいていたその瞼を
ぼくの瞳から流し込んで思い出させている
溢れている、瞳のふち。
薄明かりに浮かぶあの日の嘘を
ほんとのことにはもう、したくないんです
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