二月のはじめに降り続く雪の/あぐり
{引用=
二月のはじめに降り続く雪の
その多すぎる水分に浸りながら眠っている
白い指の腹を瞼にあてては
薄明かりに浮かぶ声を亡くしたさかなたちを
夢から逃がしてやろうと
眉間に埋もれている記憶のかたいところをはずして
少しずつ少しずつ、海を零していく
このやらかさを
なにもやさしさだなんておもったことはなくて
あたたかさに比例して重くなる世界とは
いつだって肉薄していた肌にひびが規則正しくはいっていくのを見つめている
小さな嘘を降り注いだからきみは、
ぼくのこと 幸せ なんだと嗤っているよね
二月のはじめに訪れた海の
その浜
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