ゴリラの感慨/間村長
ゴリラは騎馬戦をやりながら
俺も四十歳になったのかと
昔の初恋を思い出しながら
川の中に設置された
飛び石橋を渡って居た
ゴリラは嘗(かつ)て沈黙の神と
恐れられたものだ
岩崎商事の社員で
大酒豪の称号も貰って居た
けれどゴリラの誤算は
妻子に足を引っ張られた事だ
妻の名前はロビンマスク
あれほど解説台を揺らすな
と言っておいたのに
子供の名前はドデカフォーン
まいっちんぐ真知子先生が好きだったが
今では産婦人科医を開業して
独立して居る
俺の人生どうなっちまうんだろうな
ゴリラは冗談とも本気ともつかぬ
感慨に耽(ふけ)りながら
飛び石橋を渡りながら煙草に火を付けた
川面(かわも)には嘗ては真っ赤だったと思われるが
今では土褐色色に変じて仕舞ったカエデの葉が
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