フェイクファー/ゆえづ
 

一段と冷え込む朝だ
埃色の毛布に包まりながら咳き込んだ
小さな体の快活さに一層むせる
いたずらに温もりをまさぐるそれは
疑問符の尻尾を落ち着きなく振り動かし
そわそわと春の訪れを待っている

ねえ君ってさ
私にそっくりだよね

抱き上げた弾みでひっくり返した鍋
どろりと垂れ流れる粥は
このはらわたより生温く
私の愛はきっとこの子と同じ重さで
空気にすうっと溶けてしまうのだ
それだから私は頷いているしかなかった

ああ
風邪は人を弱くするから大嫌い


窓辺のカーテンを引っ掻く猫
テグスのように透けた陽射しに
体毛がきらきらと反射している
水槽のマリモに光の死骸が降り積もり
妙な空だと傍らで母が呟いた

雪だ


「狸の嫁入りやね」


こんなに明るい雪を知らないでいた
勢いよく窓を開けると
襟元のフェイクファーに埋まり
けほんと一つ咳をした

まっさらな瞳と見上げているこの空も
ちょうど誰かさんみたいで
笑いながら泣いちゃったりする不器用な女の子みたいで
やはり私は頷いているしかなかった


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