つっかえ棒/伊織
 
かつて自分がそうであったように職場で必要とされ、誇らしく労働している。
息子は小さいながらもチェーン店の副店長として十数名のバイト連中を束ね、本社への会議に参加するまでになった。

母は来る日も来る日も
一日に朝食を2回、昼食を1回、夕食を1回、夜食を1回作り、
洗濯機を回し、
二日に1回風呂の掃除をし、
月に一度父の墓参りをする。


仕事は精神を牽引するが、肉体を疲弊させる。
それは年を追うごとに過大になっていき、もはや眠ることすら妨げるようになる。

 (もう疲れた、
  私は一生あなた達の奴隷なの?
  おとうさん…)



しかし母は、わたしが家事を手伝おうとすると必ず
「あら、だめねえ。」
と満面の笑みと溜息をこぼしながら
スポンジを取り上げてしまうのであった。
戻る   Point(5)