辿り着きたい/高梁サトル
 
に紅潮する頬が
いつかの日に産声をあげた
きみとそっくりなこと 話せたらいいのに

「愛してる」の耳鳴りが止まないの



法螺貝から聞こえる牡牛のうなり声が
深い海底から静けさを連れてくる
天鵞絨の波間に微光する
あの真珠たちを飲み込めば
もう一度途絶えた想いを宿すことだって出来るかもしれない

「信じてる」と言い聞かせて 愛する人



どこからか転がってきた
見たこともないラベルの空缶が
固くした爪先に当たって
落とした視線の先で息を整える

沈黙が鼓膜を震わせている

瞼の錘によじ登って
銀緑色の丘の上から眼下を見下ろせば
水平線から生まれたばかりの
三日月を見つけて 手を差し伸べる
この優しい同乗者と
静かに寄り添って行けるところまで

夢現に更けてゆく
夜は少しずつ速度を増して

私を運ぶ


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