アカイミ/靜ト
 


少女の手足だけが頼りになり

背伸びしても届きそうで届かない

すんでのところで少女はくたびれて諦めてしまった

また明日のぼればいいや



次の日も次の日も登りつづけたけれど

少女の成長に合わせて

不思議と塀は高くなり

いつもいつも、もう少しのところで諦めてしまうのだった


そうしていくつも時が経ち

少女はついに決意した

ぐらつく足元に力をこめて

重ねた高い塔の上で

思いっきり飛び上がった

少女の体は美しい孤を描いて

シンと凍る空高く

ついに塀を乗り越えた

外の世界で初めてみたのは

あの日出会った小さな赤い実

赤い赤いつややかな実

少女は手をのばして赤い実をもぐと

口に入れて噛み締めた

甘くて、少し苦いその実を

少し向こうに見える高い塀を見ながら

少女はじっくり噛み締めた


塀の向こうにはまた
少し大きな赤い実が
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