ほうぼう/木屋 亞万
竹の生い茂る中を歩く
辺りは暗い
竹の脇に燈籠がともる
燈籠の火が揺れる
火の玉のように泳ぐ
竹の葉が騒ぐ
そういえばここは海の底
麦畑に迷い込む
誰も捕まえに来ない
立ち止まって空を見上げる
見上げなくとも夜空に包み込まれている
のに上を向く
麦の粒が大きい
その小さな楕円形の粒の中で
2つの目玉がぐるぐる泳ぐ
もうすぐ麦が孵化していく
麦畑は当たり前のように出口を用意する
魚が突き当たりに立っている
ずっとこちらを見ている
足を止める気にはならず
少しずつ近づいていく
魚が青緑色の足を広げる
この魚こそが海の蛙だと思う
海蛙はじっとこちらを
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