波打ち際、ゆめは覚えてない/あぐり
 
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海の
低く濡れた海の
あなたの声より低く濡れた海の
さよならなんて言い出したあなたの声より低く濡れた海の
掠れた海の波の
途方もないたくさんの囁きたちが
あした、砂浜に降っていく

今日はね
わたしのからだが欠けていった
燦々と過ぎていく風に拐われていく
ゆびさき、爪のしろいぶぶん。
あんなにもかたくかたく
守られていた約束だったのに

(こわいゆめをみておきた
あなたがそばにいない
いやだ、いやなんだ
はなれないで
ずっとわたしにそそいでほしいよなみがとまらない)

波打ち際にうずくまるひとりの朝には関係のないさかなたちがぴちぴちとしなや
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