クリオネ・リマキナ 〜海の妖精〜/鵜飼千代子
 

 零下の透明な水の中
 その小さな手が 捻れるほどいとおしくて
 魂と脳だけが 橙に透けて
 命の炎を見せつけられているようで

 なんて 原始的な
 なんて なんて原始的な姿なのか

 いま 僕にわかるのは
 凍てつく澄んだ 青の中
 あなたが生きている 
 ということだけで

 その小さな手を休めずに 
 生きる事をしている 
 その姿
 だけなんだよ

 いつか いつの日か
 その幻だけでも 抱ける日はやってくるのか
 やってくる日はあるのだろうか

  *

 あなたが 
 ハダカカメガイになる頃に



初出 NIFTY SERVE 旧FPOEM (パソ通時代のFPOEMの前身) 1997.07.29
改訂
詩集 ブルーウォーター 所収
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