うそつき/靜ト
、だからね、明日帰らなきゃいけないの、もう、会えないかもしれない、二度と」
Mはまた、
ふーん
といった
わたしは後悔と恥ずかしさで泣きそうになりながら
「だから、だから、わたしが帰るまで、一緒にいて」
と言った
なぜかわからない悲しみが溢れてこぼれ出ていた
Mは今度は
ふーん
とは言わなかった
そのかわり、困ったように微笑んで
いいよ
と言うのだった
わたしたちは暗くなるまでずっとそこにいた
冬の枯れた畑の近くの静かな団地に咲く
椿の蕾を剥きながら
もう3回目の、同じ嘘だった
うそつきなこどもだったわたしは
正直な大人になった
もうあんなふうに誰かを引き止めることはなくなったけれど
もうあんなふうに孤独を遠ざけるすべも、なくなってしまった
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