時の缶詰/靜ト
たけれど
たばこ、吸ってみようかな
大嫌いなたばこ
あたしは幸福でも不幸でもないから
どちらにもこっそり憧れてしまうのだ
憂鬱とくだらない笑い話なら沢山もっているくらいだから
あとは太宰のように脆さを美化してしまわないうちに
周りに合わせて深刻を冷やかそう
たばこ、吸ってみた
冬の夕焼けの味がした
男の隣に潜り込んで
冷えた手足をくっつけてみる
寝ながらオートマチックに抱き寄せる腕を見ながら
あぁ、やっぱり人生は時の缶詰だと思った
開けてしまったら、腐らせたくはないのだろう
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