時の缶詰/靜ト
 
たけれど



たばこ、吸ってみようかな
大嫌いなたばこ



あたしは幸福でも不幸でもないから

どちらにもこっそり憧れてしまうのだ

憂鬱とくだらない笑い話なら沢山もっているくらいだから

あとは太宰のように脆さを美化してしまわないうちに
周りに合わせて深刻を冷やかそう



たばこ、吸ってみた
冬の夕焼けの味がした



男の隣に潜り込んで
冷えた手足をくっつけてみる
寝ながらオートマチックに抱き寄せる腕を見ながら

あぁ、やっぱり人生は時の缶詰だと思った




開けてしまったら、腐らせたくはないのだろう
戻る   Point(3)