月明かりの僕たちに/いとう
 
れは血肉となって巡っている
としても
その記憶が閉ざされた夜明けには
僕たちはまた
失ったことを忘れている
としても
生きている、そのことを、
忘れていないのはもはや
何かの呪いのだろう
それは僕たちが忘れてしまった
僕たちが狩ったものの、祈り、が、
僕たちにとっての呪いであることを
忘れてしまっている僕たちへの
警鐘であることすら
僕たちはすでに
僕たちの内部に取り込めていない
のではなく
取り込んでいることを忘れていることそのものが
呪いであることに気づかないことこそが
すでに新たな呪いなのだ


 喪失とは
 失うことではなく
 忘れていることに
 気づかないこと


閉ざされた夜明けに
月明かりは意味をなくし
僕たちこそが忘れられる
失われた僕たちはそこに在って
影を残すが
その影こそが
僕たちの証で
もちろんそれは
すべての祈りに
忘れられている

影を祈るものは
どこにもいない
祈ったことこそが
忘れられるのだから

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