小説をかいていると、原子力発電所がうらやましい/パラソル
いた小説を見返して死にそうになる。
たとえば、主人公がいつのまにか気象予報士を目指していた。
テレビで天気予報ばかりやっていたからだろう。
あわてて立ち上がり台所へいき、たまねぎを
冷蔵庫からたくさんとりだして 次々にみじんぎりにした。
今までのことをすべて忘れるために。
人がこんがらがった情景
その中に自分がいるのを意識する。
そしてまた小説をかきはじめる
人がぞうきんのようにしぼられて、ジュースを流しながら
日付変更線をこえていく。
置いてけぼりにならないように 僕は必死で走ってそれをおいかける
胃がジャンプしてのたうちまわっている。
小説をかいていると、原子力発電所がうらやましい。
空気にながれていくだけで、伝わっていくあの感じが。
こんなに頭をひねっているのに、僕の小説は先へすすまない。
そしてまた主人公は気象予報士をめざそうとしている。
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